マレーシアへの1泊3日出張報告
7月21日~23日迄1泊3日でマレーシアに出張に行ってきました。その際の報告を致します。 午前中に日本を出発して、マレーシアのクアラルンプール空港へ向かいました。着陸直前にふと窓の外を見ると、眼下には不自然な光景が広がっ […]
7月21日~23日迄1泊3日でマレーシアに出張に行ってきました。
その際の報告を致します。
午前中に日本を出発して、マレーシアのクアラルンプール空港へ向かいました。着陸直前にふと窓の外を見ると、眼下には不自然な光景が広がっていました。一見は一面緑の濃いジャングルのようですが、何かが違います。
よく見るとヤシの木が整然と規則正しく幾何学模様のように植えられていました。
到着後大使館の方に聞くと、自然のままのジャングルでは国に経済的な恩恵は無いに等しいので、森林を切り開き油の取れるパームヤシに植え替えたそうです。マレーシアはパームヤシ油生産量世界2位を誇り、その用途は食品やバイオマス発電の原料等に使われているそうです。一方では、ヤシ油精製所から排出されるメタンが環境に及ぼす甚大な影響も懸念されています。パームヤシに始まり、随所にマレーシアの経済優先にかける意気込みを感じる出張になったのでした。
クアラルンプール空港に到着すると、まずはその洗練された建物に驚きました。我が国のODAによって建てられたそうですが、出発で利用した成田空港よりずっと新しくて素敵です。この空港は1998年に建てられ、設計は黒川紀章氏で、施工は日本の大手ゼネコンです。にも関わらずどこにも『日本からの援助で建てました』的な事が書いてないところが、よく言えば押し付けがましくない我が国らしいなと思いました。
食事はバングラディシュでのテロも影響もあり、外務省から観光客の多い所は危険なので避けるように!との指示があり全てホテル内で済ませました。
翌朝はプトラジャヤでメインイベントである「UHC(Universal Health Coverage)に関する閣僚会議」に出席しました。この会議は、世界銀行が主催で、ロックフェラー財団が主導し、25カ国の保健大臣が集まって、UHC(Universal Health Coverage 日本の皆保険制度をモデルにした制度)推進に向けての知識や経験を共有する会議で、今回初めてのマレーシアで開催されました。
最初に参加したのは、各国の保健大臣による円卓会議でした。議長国であるマレーシアをはじめコソボ、リベリア、スダン、エチオピアそして日本。そこではUHC導入の成功国日本と、マレーシアをはじめこれからUHCを導入したい各国がそれぞれ意見交換しました。特にエボラ出血熱で多くの犠牲者を出したリベリアは、「感染症の恐ろしさを国民も直に体験し国とも思いを共有したので、この機会にUHC導入に挑戦したい」と熱く語りました。
私からはUHC先進国の日本の代表として、2つのアドバイスをしました。「UHCの制度設計をする上での成否のポイントは、将来の人口動態を読み切ることです。UHCを導入すると、確実に平均寿命は伸びます。日本は予想よりも短期間に平均寿命が伸びることになり、その結果、給付と負担のバランスが崩れてしまいました。結局不足した分は国費を投入し、未だにその負担に苦しんでいます。もう1つは、先程各国の皆さんが口を揃えて、導入したいとおっしゃっている『無料化』の件ですが、これは避けるべきだと私は考えます。社会保障制度は、国民の『もっと、もっとください』という要求に、永遠に応え続けなくてはいけないという宿命を背負った制度です。UHCを浸透させる為に『無料化』に着手すると、この国民のもっと、もっと!という要求がエスカレートし、医療費の大幅な負担増を発生させることになるでしょう。『無料化』は、UHC制度維持に困難を生じさせる可能性が非常に高いと言わざるをえません。日本も1973年福祉元年といって高齢者医療の無料化を一時推進しましたが、結局は中止する事になりました。」この意見は、各国の大臣には衝撃的だったようで、必死にメモを取られる姿が印象的でした。
その後、25カ国の出席者が一堂に会し、全体会議を行いました。私は演台に上がり、英語で10分間のスピーチを行いました。内容は、我が国のUHCへの取り組み、健康政策の取り組み、高齢化対策について紹介し、最後に「高齢社会は怖いものではないと、これから日本が証明します。ぜひ、我が国がUHCを今後どのように成長させていくか、見にいらしてください」と発言し締めくくりました。正直英語のスピーチは全く自信がなかったのですが、必死の練習の甲斐もあり、何とか通じたようでした。
会議は午前中で終了し、午後は3箇所の視察先に向かいました。まず訪れたのは、サンウェイメディカルセンターです。中国資本の施設で、富裕層をターゲットに最先端医療の提供を行っていました。メディカルセンターだけでなく、ショッピングモール、大学、マンション、高齢者住宅なども建設され、サンウェイグループだけで一つの街を形成しているような勢いを感じました。
2箇所目に訪れたのは、小規模の高齢者介護施設のシャロンヘルスケアでした。元看護師で中国系の理事長には、マレーシアの厚労大臣かと思うほど熱心に経済優先で遅れ気味のマレーシアの高齢者政策の全体像について熱く語っていただきました。日本であれば1人用の個室ぐらいのスペースに、3つものベッドが入っていたのは驚きでした。ボランティア精神溢れる経営をしているこの施設でもこの環境です。マレーシアの平均的な施設はどのような体制なのだろうと一瞬考えましたが、推して知るべしだなと思いました。
最後にお邪魔したのは、ユニバーシティマラヤメディカルセンターです。ここは、マレーシア随一の国立マラヤ大学の付属病院で、日本の東大病院のようなところでした。
特にリハビリ施設の充実は眼を見張るものがあり、患者を楽しませながらリハビリに取り組めるようにする工夫が随所になされていました。院内に薬局は4箇所あり、急性期対応から、OTC対応までそれぞれ役割が分化されていました。
薬局は錠剤の箱出しを基本としていて、調剤は行いません。日本の薬局が、患者さんが誤飲しないように、薬をシートから出して一包化するとか、子供の体重などに合わせて細かく計算し調剤するなど、いかに親切な対応をしているのか改めて感じました。
弾丸スケジュールもこれでやっと終了し、夕食を済ませて一路日本へ帰国しました。翌朝早朝に成田に着き、羽田に移動し、地元大阪に戻り、直ぐ活動を再開しました。
海外に出る度に毎回思うこと、我が国は本当に素晴らしい!今回もそれを感じる出張になりました。